アイ・ウェイウェイ展−何に因って?/森美術館

現代中国の状況は、人を混乱させるものなのだろう。
その中で、単純でシンプルなことから何かをひとつずつ確かめるような作品を創っている、という感想を持った。

そして、作品はすべて重量と、大きさと、歴史と、歴史に対する問いを持っている。モノそのものの力を感じる。

たとえば1トンのプーアール茶の葉で創られた1メートル四方のキューブや、レンガ状に固めた茶で組み立てた小屋など、伝統的に存在しているものを使って(プーアール茶の葉とは固めて保存し発酵させるものである)、それが用途とはまったくべつのものとして表現されている。
あるいは、唐時代の貴重な壺を割ったりコカコーラのロゴを描く行為。
今まで積み上げられてきたものがあり、それが現代ではどのように扱われているのか。今まで信じてきたものは何だったのか。

「文化的、歴史的、社会的な因果関係、「何が何に因って在るのか」、そして「自分はどこから来て、どこへ行くのか」」という人間的な問い…。

そしてまた、「ドクメンタ12」での、1001人の中国人をドイツの会場に連れて行きその存在を作品とするプロジェクトのドキュメンタリー映像で見たアイ・ウェイウェイは、詩的な言葉を話し、いつも革新的であろうとする、まさに芸術家という感じがした。
その中で、連れられていった中国人たちに、アイ・ウェイウェイをどう思うか、というインタビューをした場面があって、いい人、優しい人のような感想の中で、いつも何かたくらんでいる気がする、という答えがあって面白かった。私たちをドイツに連れてきて、楽しかったが、アイ・ウェイウェイはこの事によって評価をえて、賞賛を受けるのだ、自分にはそういうことはできない。
素朴に生きている庶民と、芸術家とは、共有できる部分と出来ない部分、というものがあるのだと思う。(柳川)


★おまけ★