田中浩一展 ザムザ・シンドローム/ギャラリイK(京橋)

つい最近のある日、自分のグループ展のDMを私にギャラリイKに伺うと、なにかバケモノのようなものが描かれた大きな絵が否応なく目に入った。その絵からは何か圧力のようなものを発していた。何かに似ていると思った。ギャラリー主の宇留野さんと美術批評家の宮田徹也さんとあと二人の男性がそこにいた。そのうちのお一人が、作家の田中浩一さんだった。目がギラギラと輝いている人だった。今考えると、かもしれないが、髪が乱れてすこしお疲れのようにも見えた。その日はちょうどオープニングの日だった。私は、感想を言おうとしたがうまく言葉にできずに、月並みなことしか言えなかった。自分のボキャブラリーの貧困さが恥ずかしかった。その絵は、鮮やかな青の背景に、ワイシャツと赤いネクタイが何重にも積み重なったかのようなモノが中心に大きく描かれているものだった。田中さんは、東京都庁からみた風景もモチーフの一つであるようなことをおっしゃった、私は、初めに見た時に何かに似ているとおもったのは、それだと思った。都庁からみた東京の風景は、私もいつか描きたいと思っているものだった。それは、都市というよりもバケモノのようだと思っていた。
田中さんは、礼儀ただしく穏やかにお話される中に、なにか極端なものを秘めていらっしゃるような感じがした。
その田中さんが、その後亡くなられたと聞き、驚いてしまった。
もっと別の作品も見たいと思ったのだ。
でも死は、なんというか田中さんの個人的な出来事であり、いくら新しい絵が見たいとおもってもかなわない世界に行ってしまわれたのだなと思った。
死はいつ訪れるかわからないものだから、私も生きているうちに頑張りたいと思う。

【以下ギャラリイKのサイトから】

※ 遺作となった今年の展示作品から
「魔都を召し上がれ」2010年 キャンバスにアクリル 193×270cm (画像

※ 宮田徹也氏による、2008年個展の論評 → コラムページの<田中浩一展 −魔都− 2008年8月18日〜23日>へ